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ごあいさつ

先般、瀬野光子先生から理事長を引継ぎました三井ツヤ子です。未熟者ですが皆様の

お力をお借りして一生懸命務めさせていく所存です。

就任にあたり、会の発展を願い、拙いながら私の考えを述べさせていただきます。

シューベルト協会は発足当時の任意団体から一般社団法人としてスタートを切りました。リートを愛する者が引続き会員として日々、お互いにリスペクトを持ちながら、刺激し合っている素晴らしい団体だと思います。

 

オペラのようなメーキャップも扮装もなく動きも制限された中で体一つ、目の表情ひとつで

詩の内容を表現し、聴衆に届けなければならないリートは実は大変要求水準の高い分野だと私は常々考えています。これはおそらく皆様と共有する認識だと存じます。まして使用する言語はドイツ語であります。私達日本人にとって大きなハンディキャップであるのは間違いありません。

その昔、感銘を受けた歌手の演奏はその言語がドイツ語であることを私達に忘れさせ、直接心の琴線に触れてくるものでした。歌手の魂がそのまま、肌に来るという経験は強烈でした。人間である以上、喜怒哀楽の感情表現にそれほど大きな差異があるとは思えません。

ドイツ語を母国語としている方々が皆優れたリート歌手かというとそうとは言えず、リートは世界中から愛されている文化遺産のようなものです。

ハードルは高いですが、美しいドイツ語の発音を心掛け、且つ生き生きした演奏を通じて聴衆に「あぁ、リートって素敵だなあ、又聴きにこよう」と思っていただくことが会の発展に直接つながるのだと私は信じています。

少し前、ご自分が出演されたシューベルト協会の演奏会でお客さんが生の臨場感を味わられて以來、演奏会に足を運ばれていると他理事から聞きました。これこそが私達のめざすべきものだと確信します。

 

本来リートはオペラと違い個人が地道に自己と対峙しつつ、深く研鑽していくたちのものである為、一匹狼的な側面は確かにあります。然しながら一方、会に所属している歌手が結束して出演する主催演奏会で塊となってエネルギーを放出し、リートの素晴らしさを聴衆に伝えたなら、数万馬力です。

「リートって何と魅力的な分野なのだろう、この協会に入会したい!」と考える人が今後も増えることを期待しています。

 

又リートは決して若者だけのものではなく、人生経験も豊富になり、感情の襞も増え、詩の解釈力が深まる中年以降に一層印象深い演奏が聴ける分野でもあります。

中高年の会員の方も臆せず主催演奏会に出演されるのを切に期待します。

先日のシューベルト協会の演奏会にも恐らく60代、70代の方々とお見受けされる方々が実に味わい深い演奏を披露されていました。若い時からの長いスパンでの真摯な研鑽が中年以降の歌唱に確実に彩りを与えることを

若者に伝えていくのは大切な事であります。ともすればオペラに重きが置かれる傾向のある中、

リートの地位向上の寄与につながっていくと存じます。これは日本シューベルト協会の悲願でもあります。

 

一般社団法人日本シューベルト協会理事長 三井ツヤ子 

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